パッフェルベルの街のとある路地を曲がると、入り口に「Ruscha」とだけ書かれた菫色の看板がかけられた扉が。
そこは錬金術学院 学籍番号0269 ルーシェの小さな工房です。
初めていらっしゃった方は、カテゴリーより「はじめに」をお目通しいただければ幸いです。
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(PL注意
この記事は、リリさんに会って捜索道具をお借りしたこと、
ムーングロウさんにスミレを譲ってもらったことを除きフィクションです。
また、更新できなかったため、後追い更新です。)
手紙で工房を持ったことを報告すると、
お姉ちゃんから「見に行くっ!」との手紙が届く。
どうやら、パッフェルベルの街の見物もしたいらしい。
というわけで、今日はお仕事はお休み。
待ち合わせの時間に街の入り口まで迎えに出ると、
颯爽と馬にのったお姉ちゃんの姿。
変わらぬ様子に、僕もうれしくなる。
でもさ、お姉ちゃん……適齢期なんだから、
一人で遠出をするのはどうかと思うよ?
いや、口が裂けてもいえないけど。
一通り再会を喜び合い、街や僕の工房や学院やらを案内しようと促すと、
「パッフェルベルの街はあとでいいわ、海よ、海が見たいわっ!
ぼーっとしてないで、さっさと行くわよっ!」
満面の笑顔でそんな言葉を。
はい、手紙に書きましたよ、確かに。
海がきれいだったって。
そして、僕と一緒で、お姉ちゃんも海を見たことがないのも知ってたよ。
でもさ、いきなり予定をぐっしゃりしなくてもいいじゃんか…
愚痴のひとつも言いたくなるけど、しかし、逆らうことのできない僕。
お姉ちゃんの従者よろしく、港湾都市シューマンに向うはめになったのである。
ただし、シューマンへは乗り合い馬車で向かうため、
学院の厩にちょっと馬を預かってもらうことにした。
で、馬車がシューマンにつけば、何をさておいても海、とばかりに
トロイメライ海に突き進むお姉ちゃん。
今日は潮が満ちてるから危ないよ!という僕の言葉も聞かず…
バッシャーン!!
……どうしてそんなに…無鉄砲なのです…お姉ちゃん。
親切なマーマンさんに手を貸していただき、
陸に上がったお姉ちゃんは濡れネズミ状態…
いろいろな意味でそのまま馬車にも乗せられないので
シューマンで一泊するはめに…
まったく…いい年して何をはしゃいでるんですか…
さすがにこぼした僕の文句に、ぷぅっと頬を膨らませつつも
「ごめんね、ルーシェ。
久しぶりに会えたから嬉しくてはしゃいじゃったのよっ…」
謝るならもうちょっとしおらしくしてよね…
ま、それがお姉ちゃんだけどさ。
そんなこんなで、翌朝。
なんとかシューマンから帰ってきて、工房で一通りはしゃぎ、
学院ではしゃいで……
街ではあるお店の前で動かなくなった。
お姉ちゃん…そんなに道具屋さんが楽しいですか…?
しばらくは梃子でも動かなそうなお姉ちゃんを道具屋の主人に頼んで、
ちょっと仕事でもしようかと店を出れば、ばったりリリさんに会う。
今日はイヴさんのとこで、採取道具を借りて狩に行こうと
思ってたのに予定ががた崩れなんですよ、などと愚痴ったら、
「貸してあげるからちょっと行って来れば?」
などとおっしゃってくださり。
ありがたくお借りして、黄色い蜂さんとウサギさんを
ねぎブレードで叩いて戦利品を獲得してきた。
すごくいい運動になったよっ!っと思いながら帰って来たが、
工房にはお姉ちゃんの姿はなかった。
……もう30分以上たってるんだけどなぁ。
心配しつつ、道具屋に迎えに行くと、僕を見つけるなり香り玉を指して…
「あれほしいわっ!とってもかわいいもの。ペンダントヘッドにしたい!」
いや、あれはだめ、絶対にだめ、一番危険がデンジャラスだからっ!
無事家に帰れなくなるでしょ、あれを持ってたら。
大丈夫だ、どうにかなる、っと反論するお姉ちゃんを、
なんとかなだめすかして工房に引っ張った。
昼食にウサギの肉のシチューを作ってご機嫌をとりつつ。
あきらめてもらう方法を考える。
マナをつめた魔力珠でごまかせないかな…
いや、今日、魔法屋さんお休みだ…
ロザリオは気に入りそうだけど持ってかれると僕がこまるし…
ふと目に入ったのは一輪挿しのスミレ。
ムーングロウさんがレアを狙ったのに普通のを摘んでしまい不覚っ!
っと言ってたスミレである。
ふっと思いつき、苺鍋を用意する。
お姉ちゃんに危ないから近づかないように、と念を押して、
釜に火を入れ、鍋にスミレを入れる。
しばらくたって鍋を覗き込めば、無事完成している。
……ふぅ…よかった。これで納得してくれるといいんだけど…
鍋のなかから、出来上がったものを取り出すと、
手のひらにのせてお姉ちゃんに差し出す。
僕の手のひらにはスミレの花をそのまま調合して作った、
小さな紫色のペンダントヘッド。
一瞬驚いた顔をしたお姉ちゃんは、僕に手のひらを差し出す。
ころんっとお姉ちゃんの手に小さな紫色を転がせば…
「ありがと、ルーシェ!」
お姉ちゃんは満面の笑顔。
……なんとか香り玉についてごまかすことに成功。
両親へのお土産を預けて、街の入り口まで馬を引く。
「じゃ、また来るわ~!
がんばるのよ、ルーシェ!」
そんな言葉とともに颯爽と帰っていく。
その首元には小さな紫のスミレが揺れていた。
――台風一過、といった感じだけど、ちょっと寂しい気もするよ、お姉ちゃん。
この記事は、リリさんに会って捜索道具をお借りしたこと、
ムーングロウさんにスミレを譲ってもらったことを除きフィクションです。
また、更新できなかったため、後追い更新です。)
手紙で工房を持ったことを報告すると、
お姉ちゃんから「見に行くっ!」との手紙が届く。
どうやら、パッフェルベルの街の見物もしたいらしい。
というわけで、今日はお仕事はお休み。
待ち合わせの時間に街の入り口まで迎えに出ると、
颯爽と馬にのったお姉ちゃんの姿。
変わらぬ様子に、僕もうれしくなる。
でもさ、お姉ちゃん……適齢期なんだから、
一人で遠出をするのはどうかと思うよ?
いや、口が裂けてもいえないけど。
一通り再会を喜び合い、街や僕の工房や学院やらを案内しようと促すと、
「パッフェルベルの街はあとでいいわ、海よ、海が見たいわっ!
ぼーっとしてないで、さっさと行くわよっ!」
満面の笑顔でそんな言葉を。
はい、手紙に書きましたよ、確かに。
海がきれいだったって。
そして、僕と一緒で、お姉ちゃんも海を見たことがないのも知ってたよ。
でもさ、いきなり予定をぐっしゃりしなくてもいいじゃんか…
愚痴のひとつも言いたくなるけど、しかし、逆らうことのできない僕。
お姉ちゃんの従者よろしく、港湾都市シューマンに向うはめになったのである。
ただし、シューマンへは乗り合い馬車で向かうため、
学院の厩にちょっと馬を預かってもらうことにした。
で、馬車がシューマンにつけば、何をさておいても海、とばかりに
トロイメライ海に突き進むお姉ちゃん。
今日は潮が満ちてるから危ないよ!という僕の言葉も聞かず…
バッシャーン!!
……どうしてそんなに…無鉄砲なのです…お姉ちゃん。
親切なマーマンさんに手を貸していただき、
陸に上がったお姉ちゃんは濡れネズミ状態…
いろいろな意味でそのまま馬車にも乗せられないので
シューマンで一泊するはめに…
まったく…いい年して何をはしゃいでるんですか…
さすがにこぼした僕の文句に、ぷぅっと頬を膨らませつつも
「ごめんね、ルーシェ。
久しぶりに会えたから嬉しくてはしゃいじゃったのよっ…」
謝るならもうちょっとしおらしくしてよね…
ま、それがお姉ちゃんだけどさ。
そんなこんなで、翌朝。
なんとかシューマンから帰ってきて、工房で一通りはしゃぎ、
学院ではしゃいで……
街ではあるお店の前で動かなくなった。
お姉ちゃん…そんなに道具屋さんが楽しいですか…?
しばらくは梃子でも動かなそうなお姉ちゃんを道具屋の主人に頼んで、
ちょっと仕事でもしようかと店を出れば、ばったりリリさんに会う。
今日はイヴさんのとこで、採取道具を借りて狩に行こうと
思ってたのに予定ががた崩れなんですよ、などと愚痴ったら、
「貸してあげるからちょっと行って来れば?」
などとおっしゃってくださり。
ありがたくお借りして、黄色い蜂さんとウサギさんを
ねぎブレードで叩いて戦利品を獲得してきた。
すごくいい運動になったよっ!っと思いながら帰って来たが、
工房にはお姉ちゃんの姿はなかった。
……もう30分以上たってるんだけどなぁ。
心配しつつ、道具屋に迎えに行くと、僕を見つけるなり香り玉を指して…
「あれほしいわっ!とってもかわいいもの。ペンダントヘッドにしたい!」
いや、あれはだめ、絶対にだめ、一番危険がデンジャラスだからっ!
無事家に帰れなくなるでしょ、あれを持ってたら。
大丈夫だ、どうにかなる、っと反論するお姉ちゃんを、
なんとかなだめすかして工房に引っ張った。
昼食にウサギの肉のシチューを作ってご機嫌をとりつつ。
あきらめてもらう方法を考える。
マナをつめた魔力珠でごまかせないかな…
いや、今日、魔法屋さんお休みだ…
ロザリオは気に入りそうだけど持ってかれると僕がこまるし…
ふと目に入ったのは一輪挿しのスミレ。
ムーングロウさんがレアを狙ったのに普通のを摘んでしまい不覚っ!
っと言ってたスミレである。
ふっと思いつき、苺鍋を用意する。
お姉ちゃんに危ないから近づかないように、と念を押して、
釜に火を入れ、鍋にスミレを入れる。
しばらくたって鍋を覗き込めば、無事完成している。
……ふぅ…よかった。これで納得してくれるといいんだけど…
鍋のなかから、出来上がったものを取り出すと、
手のひらにのせてお姉ちゃんに差し出す。
僕の手のひらにはスミレの花をそのまま調合して作った、
小さな紫色のペンダントヘッド。
一瞬驚いた顔をしたお姉ちゃんは、僕に手のひらを差し出す。
ころんっとお姉ちゃんの手に小さな紫色を転がせば…
「ありがと、ルーシェ!」
お姉ちゃんは満面の笑顔。
……なんとか香り玉についてごまかすことに成功。
両親へのお土産を預けて、街の入り口まで馬を引く。
「じゃ、また来るわ~!
がんばるのよ、ルーシェ!」
そんな言葉とともに颯爽と帰っていく。
その首元には小さな紫のスミレが揺れていた。
――台風一過、といった感じだけど、ちょっと寂しい気もするよ、お姉ちゃん。
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